相手の肌をなでたりさすったりするふれあいは、非言語のコミュニケーションとも呼ばれています。
高齢者医療の分野では、耳が不自由になったり言葉を発することが困難になった患者に対して肌へのタッチングを行うことで、孤独感を弱める効果があったことが実証されています。
健常者にとってもお互いの手を触れながら会話をしたことで、言葉が伝わりやすくなったという経験が多くの人にあるのではないでしょうか。
しかし終末期を迎えた高齢者とのふれあいには注意が必要になります。
人間は終末期を迎えると皮膚感覚が変化し、他人から触れられると不快感を感じるケースがあるからです。
場合によっては指1本触れられただけでも全身が嫌な感覚に襲われ、他人からのタッチングを全く受け付けなくなる高齢者もいます。
延命治療のための点滴や人口栄養が皮膚感覚を変化させる要因だとされています。
そのため終末期を迎えふれあいを拒むようになった高齢者に対しては、私はあなたに寄り添っていますよ、という意思を目で伝えることが重要になります。
肌へのタッチングがなくても寄り添うような目で見つめられることで、温かみを感じる傾向があるからです。
また、人間は死期が近づくと本能的に自分の過去を振り返るともいわれています。
周囲の人からの温かみを感じると人生を通して最も伝えたかったことを、必死になって言語化してくれることがあるかもしれません。
皮膚感覚が変わってしまっても、寄り添う目で見つめ耳を傾けることでふれあいが成立することもあるのです。